狼上司と秘密の関係
梨江は不服そうな表情になって残りのドリンクをすべて飲み干した。


「梨江って子供苦手だっけ?」

「苦手っていうか、芝生に出たときに逃走しちゃったりするでしょう? 捕まえるの結構大変なんだよねぇ」


梨江の言葉に千明は頷いた。
アイス体験では芝生の傾斜を利用しているから、施設の外へ出る。

そうするとどうしても嬉しくなって走り回る子供が出てくるのだ。
もちろん、親や引率の先生たちが引き止めに走ってくれるけれど、我々も普段以上に体力を使う。

「梨江なら大丈夫だよ。体力あるんだから」
「簡単に言ってくれちゃって」


恨めしそうな視線をむけてくる梨江に笑ってみせる。
きっと、この中で一番体力があるのは梨江だ。


「千明は子供大好きだよね? ちょっとだけ保育士してたんでしょう?」
「うん」


千明は最後に残ったちくわを口に放り込んでお弁当箱の蓋を閉めた。
ごちそうさまと、手を合わせる。
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