狼上司と秘密の関係
「ここで見てても子供好きなんだなぁってわかるよ。保育士なんて天職だろうに、どうしてやめたの?」


その質問に胸のあたりがチクリと痛む。
私だって保育士は天職だと思っていた。

保育士になるために勉強をして、資格も取った。
だけど夢と現実は違うものだった。

ただ子供と遊んでいればいいというものではない。
わかっていたはずなのに、考えが甘かったんだ。

そして私は脱落した。
せっかく叶えた夢を自分から手放すことになった。


「おい」


晋也が梨江の肩をつつく。
梨江が「え?」と首をかしげて振り向くと、晋也は顔をしかめて左右に首を振った。

『その話はタブーだ』と、顔だけで知らせている。
「別に、大丈夫だよ」

まだ微かな胸の痛みを感じながらも千明はそう言って笑顔を浮かべたのだった。
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