君の隣は誰にも譲れない
 研究室へ通う度、先生を慕う気持ちは大きくなった。稚奈の話を聞かされて、さらに会いたくなった。過去のいざこざから先生を警戒する父が、僕の化学を勉強したいという望みを取り上げた。

 御曹司として生きるようになり、先生を訪ねた時、美しく聡明に成長した彼女と再会した。もう、気持ちを止められなかった。

 先生が亡くなって本郷ファーマシーがピンチになったとき、僕は父と喧嘩になっても彼女を守ると決めていた。先生は亡くなる直前お会いしたとき、無理はしないで、出来る範囲で稚奈を助けて欲しいと言い残された。

 出来る範囲で……先生、あのとき言いましたよね。僕は稚奈さんのため僕が出来る範囲を広げるため、彼女をもらいたい。彼女を僕の妻とすれば、彼女に分け与えられるものや、共有出来るものが自動的に増える。

 先生は苦笑いしていた。君が稚奈を昔から好きなのはよく知っているよ、と。稚奈がいいといったら僕は反対なんてする気はないよ。でもお父さんのことは解決してからにしてくれ。稚奈が不幸になると言い残された。

 今、僕の隣で眠る稚奈は何の不安もなさそうにすやすやと可愛い寝息を立てて眠っている。

 先生……。お約束通り、稚奈さんを頂きました。安心して下さい、彼女は僕が一生かけて守り抜き、幸せにします。ついでに先生の残した会社も繁盛させますのであちらから見ていて下さいね。

 fin.
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