愛しい吐息 ~凛々しい婚約者は彼女を溺甘で支配的な愛にとろけさせる~
家に着くと、花純は冷蔵庫の中身とにらめっこしたのち、料理を始めた。
そして、後悔した。
帰って来た雅は玄関まで漂う焦げ臭さに驚き、ダイニングで途方にくれている花純を見て苦笑した。
「無理しなくていいのに」
「だって」
普段は家政婦が料理もして帰って行く。今日は彼女が休みだったので、たまには、と頑張ったのだが。
「気持ちだけでうれしいよ」
泣きそうな花純の顔を見て、雅はキスをする。
「そういう顔もそそるから、誘ってるわけじゃないならやめてくれないか」
雅は思わず花純を抱きしめる。
「しょんぼりしている花純はたまらなくかわいい」
花純が顔を上げないので、雅はその頭を撫でた。
「後片付けは私がやるよ。デリバリーをとろう。届くまでにお風呂に入って来るから。もし遅れてもコンシェルジュが受け取ってくれるしね。ケーキも食べなくちゃ」
「用意してくる」
花純は浴室に行く。
雅は着替えを取りに自室へ行った。
ダイニングに戻った花純はこっそり自分のスマホを見る。
「何を見てるんだ?」
雅の声に驚き、花純はスマホを取り落とした。思った以上に早く戻って来た。
「大丈夫か」
雅はスマホを拾い、何気なくその画面を見る。
「み、見ないで!」
花純はすぐにスマホを奪い取る。
あっけにとられたあと、雅はニヤリと笑った。
「欲しいのか?」
スマホを花純の手からするっと抜き取り、雅が言う。
「違う」
「確かにたまにはこういうのもいいかもな」
下着とも言えない紫のレースのそれを見せて、雅は花純の反応を窺う。
赤面して、花純はうつむく。
「こういうのとか」
ページをめくって雅は見せつける。花純は目をそらした。
「お風呂見て来る!」
雅に背を向けると、くすくす笑いが花純の耳に届いた。
ピンクの花びらの入浴剤を入れて、花純はつぶやく。
「人の気も知らないで、意地悪」
声は湯船に落ちて、消えた。