愛しい吐息 ~凛々しい婚約者は彼女を溺甘で支配的な愛にとろけさせる~
ぐるぐると頭に紫苑の言葉がまわる。
最後に、記憶の中の紫苑は意地悪な笑顔でひときわ大きく彼女に言う。
雅の戸籍を汚さないで。
「ダメ!」
花純は婚姻届けを雅から奪った。
出そうとしていた雅も、受け取ろうとしていた守衛も、驚いて花純を見る。
花純はそのまま逃げだした。
一瞬呆然としたものの、守衛に「すみません」と言って雅はすぐに駆け出す。
「花純、待って!」
花純はいつにない素早さで走り去り、運動不足の雅は早々に息をきらして追いつけなかった。
花純はとぼとぼと街を歩く。
涙がぽろぽろと溢れて止まらなかった。
猫のバッグチャームが目に入る。
迷子になっても必ず見つけるから。
雅の笑顔が頭に浮かぶ。
今、花純の心は迷子のようにさまよっている。
雅は見つけてくれるだろうか。
見つけるから。何度でも。と彼女は笑った。
見つけて、雅。
私を見つけて。
だけど。
雅を本当に愛してるなら、と、くしゃくしゃになった婚姻届けを見ながら思う。
本当に愛しているなら、番を解除してもらうべきなのに。
雅を自由にしてあげないといけないのに。
胸が引き裂かれるように痛い。
そんなことできやしない。彼女と一緒にいたい。
もし番を解除されたら、と花純は想像する。が、うまく想像できない。
番を解除されたオメガは次の番を得ることができず、発情しても相手がいないために苦しみ、自ら死ぬこともあるという。
ある種の誘惑が花純に広がっていく。
いっそ、自分から……。
そのとき、スマホが鳴った。
高部圭梛と表示されていた。
最後に、記憶の中の紫苑は意地悪な笑顔でひときわ大きく彼女に言う。
雅の戸籍を汚さないで。
「ダメ!」
花純は婚姻届けを雅から奪った。
出そうとしていた雅も、受け取ろうとしていた守衛も、驚いて花純を見る。
花純はそのまま逃げだした。
一瞬呆然としたものの、守衛に「すみません」と言って雅はすぐに駆け出す。
「花純、待って!」
花純はいつにない素早さで走り去り、運動不足の雅は早々に息をきらして追いつけなかった。
花純はとぼとぼと街を歩く。
涙がぽろぽろと溢れて止まらなかった。
猫のバッグチャームが目に入る。
迷子になっても必ず見つけるから。
雅の笑顔が頭に浮かぶ。
今、花純の心は迷子のようにさまよっている。
雅は見つけてくれるだろうか。
見つけるから。何度でも。と彼女は笑った。
見つけて、雅。
私を見つけて。
だけど。
雅を本当に愛してるなら、と、くしゃくしゃになった婚姻届けを見ながら思う。
本当に愛しているなら、番を解除してもらうべきなのに。
雅を自由にしてあげないといけないのに。
胸が引き裂かれるように痛い。
そんなことできやしない。彼女と一緒にいたい。
もし番を解除されたら、と花純は想像する。が、うまく想像できない。
番を解除されたオメガは次の番を得ることができず、発情しても相手がいないために苦しみ、自ら死ぬこともあるという。
ある種の誘惑が花純に広がっていく。
いっそ、自分から……。
そのとき、スマホが鳴った。
高部圭梛と表示されていた。