愛しい吐息 ~凛々しい婚約者は彼女を溺甘で支配的な愛にとろけさせる~
「僕はね、雅を見て一目で運命の番だとわかった」
 花純はコップをテーブルに置いた。
「君は運命の番なんかじゃないでしょ。別の番を探しなよ」
「無理よ」
 雅以外は考えられない。
 もし雅がほかの誰かを選ぶなら、自分は。
「雅が、用事があるっていうから仕方なくホテルを切り上げたんだけど」
 びくっと花純が震えた。
「ここにいるってことは、君との用事じゃないってことか。捨てられた?」
 青ざめた顔で紫苑を見る。
「振袖の雅、見たよね。それはそれは綺麗だった」
 うっとりと紫苑は語る。
「今、巨額詐欺にあって大変でしょ? だからお客さんを紹介してあげたんだ。君と違って、僕は雅の役に立つ」
 紫苑の言葉が突き刺さる。花純はいつも雅に世話をやいてもらってばかりだ。
「仕事のときはキリッとしてるのに、僕と二人きりになると、急に甘い顔になって」
 花純は雅の甘やかな微笑を思い出す。
自分だけに見せる顔だと思っていたのに。
「僕に出会えてよかった、と感謝して抱きしめてくれたんだ」
 嘘だ。聞いてはいけない。
 そう思うのに、足が動かない。立ち上がれない。
「オメガの男とアルファの女って組み合わせって完璧だと思うんだよね」
 紫苑の声が妙に頭に響く。
「アルファの女性って男と同じものがついてるわけじゃん。逆にオメガの男は男なのに妊娠できる。つまり、両者は人として完成している。完璧なアルファと完璧なオメガが結ばれるのって、必然だと思わない?」
 花純はぐったりと背もたれに寄りかかった。なんだか体が熱い。
「君は雅に悦ばせてもらう一方だろうけど、僕は雅に女としての悦びもアルファとしての悦びもあげられるんだ」
 彼は花純を見て含み笑いを漏らす。
 花純は紫苑を見た。体がいうことをきかない。
「君は邪魔者でしかないんだよ。隙間を埋めるカスミソウなんていらないんだ」
 紫苑はふと、花純のバッグからはみ出している紙に気が付く。
 あ、と思ったときにはもう、紫苑に取られていた。
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