愛しい吐息 ~凛々しい婚約者は彼女を溺甘で支配的な愛にとろけさせる~
 瞬間、花純は男の手を振り切って、紫苑を襲う男に体当たりした。
「うわ!」
 予期せぬ攻撃に、男は花純ともども床に転がり落ちる。
 その隙に紫苑は立ち上がり、部屋を出た。
「この女!」
「あいつはどうする」
「ほっとけ」
 男の一人が部屋に鍵をかけた。
「あいつの動画も取れれば千ヶ崎グループにもいい脅しになったのに」
 花純は必死に立ち上がろうとする。が、男にふみつけられ、あっさり床に崩れる。
 先ほどの瞬発力、あれが最後の力だった。
「薬が効いてるようだ」
「よく動けたな」
 つま先で、ごろん、と転がされる。
 花純は荒い息で見下ろす男たちを見た。
 雅のつきあいで出会ったアルファは、どの人もきちんとしていた。雅の交友関係が良かっただけなのだろうか。
「前に発情したオメガとやったときはフェロモンですっげえ興奮したんだが。あんまりフェロモン出てないな」
「雅と番になってんだろ。雅の悔しがる顔が楽しみだ」
 はは、と男たちは笑う。
 乱暴に花純の服を脱がそうとする。
 花純が弱々しく抵抗すると、容赦なく横腹を蹴られた。
 くの字に体を折り曲げ、痛みに耐える。
 その姿を見て男たちが笑い声をあげる。
 こんな男たちに負けるなんて。
 ああ、ごめんなさい、雅。
 最後まであなたに迷惑をかけてしまう。
 たとえ自らを消したとしても、動画をとられたあとでは、雅の名誉が汚れてしまう。
 男が花純をおさえつけた。
 そのときだった。
 がんがんとガラスのドアが叩かれた。
 なんだ、と男たちが振り返る。
 ガシャン、と大きな音がして消火器が飛び込んできた。
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