愛しい吐息 ~凛々しい婚約者は彼女を溺甘で支配的な愛にとろけさせる~
「同意なく噛んだことに対しての『やっちまった』だ」
 え、と花純は驚く。
「勝手にこちらの都合で結婚したようなもんだ。あなたに失礼すぎるだろ」
「でも、そんな、え……?」
 花純は混乱した。
「だから誤解したのか? 私が後悔していると?」
 雅は苦笑した。
「あなたは私の運命の番だと、最初から言っているだろう」
 花純は目を丸くした。
「あんなにも愛したし、プレゼントもしたし、愛してると言葉でも伝えた。これでも伝わってないなんて」
 半ばあきれるように、笑うように、雅は言った。
 しょぼん、と項垂れる花純の頭を、左手を伸ばして撫でた。
「あなたらしい。早とちりとうっかり。そういうところも愛してる」
 花純は泣きそうに顔をゆがめた。
「いつも何かを我慢しているようだった。不安そうでもあった。あなたの不安の原因をわかっていなかった。すまない」
「謝るようなことじゃないのに……」
「それでも私を信じようとしたんだろう? 苦しかったね」
 優しくいたわる声。花純は涙を我慢できなかった。
「これからはちゃんと言ってほしい。行き違うのは私も苦しいから」
「ごめん」
「私も言わないとね。私はあのとき、仕事でホテルに行っていたんだよ」
「振袖で……」
「千ヶ崎に指定されたんだ」
 どきっとした。
「中東の王族が土地を買いたがってる、紹介したいと言われて会いに行った。本当に王族だった。だが、条件が合わずに断ったよ」
 急に王族と言われて、花純は戸惑う。
「その人が振袖が大好きだというんで、しぶしぶ着たんだ」
 雅は苦い顔をした。
「売買は不成立だったが、それなら借りたいと言われてね。現在は担当を決めて私の手を離れた」
「お礼を言って、抱きしめた?」
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