愛しい吐息 ~凛々しい婚約者は彼女を溺甘で支配的な愛にとろけさせる~
 雅は懐から紙を取り出す。
「この書類を一緒に書いてくれ」
 ピンクの枠の婚姻届けだった。
「やり直しのプロポーズ?」
「そうだ」
「思ってたのと違う」
 なんだかおかしくて、涙があふれて来た。
「嫌か?」
「あなたらしくて好き」
 花純の言葉に、雅は苦笑する。
「改めて言うのはなかなか勇気が必要なんだぞ」
「この婚姻届けって」
「以前、書き損じに備えて結婚情報誌を買っておいた」
 恥ずかしそうにそっぽを向いて、雅が言う。
 彼女が書店で困ったようにうろうろと雑誌を探す姿を想像して、少し笑う。
「笑うなよ」
「笑ってない」
「笑ったじゃないか」
 雅が花純の脇をくすぐる。
 やめて、と花純は笑いながら体をくねらせた。
 観覧車はゆったりと動き、やがて地上に戻る。
 降りた瞬間、待ち構えていた着ぐるみたちがクラッカーを鳴らす。
 ぱん、ぱん、と音が鳴り響く。
 同時に係員が紙吹雪を振らせた。
 花純は照れて雅に体を寄せた。
 雅はしっかりとその肩を抱き、ささやく。
「明日は休みをとった。一日たっぷり時間をかけて、私の運命の番だとわからせよう」
「そんなことばっかり言って」
 顔を赤くする。
 雅の顔が近付き、唇が重なる。
 花純は幸せな気持ちで目を閉じた。
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