ご令嬢ではありません!~身代わりお見合いだったのに、敏腕CEOが執愛に目覚めたようです~
「どこに行く?」

 社長の問いに、私は笑顔で指をさした。

「牛丼屋です」

 アパートから徒歩五分の大手牛丼チェーン店。私の行きつけだ。

「なるほど」

 社長は少し困惑した顔で考え込むように牛丼屋の看板を見た。

 デートに牛丼屋なんて聞いたことがない。でも、待ち合わせを決めてオシャレなお店でデートするような関係性でもない。

 だって社長は、もうすぐ結婚するのだから。

 自動扉が開き、お店に入ると、「いらっしゃいませ~」という元気な店員の挨拶を浴びた。

 社長は店内を見渡しながらお店に足を踏み入れる。おそらく、初めて入ったのだろうが、なぜか堂々とした貫禄を漂わせている。

 テーブル席に座り、社長にタブレットメニューを渡した。

「今はタブレットで注文するのか」

 社長は感心しながら言った。私にとっては当たり前の光景でも、社長にとっては全てが物珍しいのだろう。
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