ご令嬢ではありません!~身代わりお見合いだったのに、敏腕CEOが執愛に目覚めたようです~
(なんだろう、また尽くし癖が発動した?)

 貴富さんは、私のお世話を焼くことをとても喜ぶ習性がある。今回もそれで喜んだのかと思いきや、真意は別だった。

「さあ、用意ができだぞ! 一緒に入ろう!」

「ええ⁉」

 貴富さんが喜悦の声を上げているので、断りづらい。

「さあ!」

 と言って、手を差し伸べてくる。

「いや……え、一緒にお風呂に入るのですか?」

「なにを恥ずかしがっている。芳美の裸は隅々まで記憶しているよ」

「言い方……」

 そりゃ貴富さんほどの抜群の記憶力があれば、写真を撮ったように脳内にインプットできるのだろうけれど、それを言葉にされると困る。

「いや、でも」

「いいから、入るぞ」

 貴富さんは、普段は優しいけれど、こういう場面になると強引になる。そんなギャップがズルいし上手いと思う。

 思わず胸が高鳴ってしまった私は、差し出された貴富さんの手を取った。
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