ご令嬢ではありません!~身代わりお見合いだったのに、敏腕CEOが執愛に目覚めたようです~
いわばそういう宗教観の元に生きているわけだから、論理も反論も受けつけない。それのみが正しいと信じているので、考えを覆すことは、教えに背く行為となる。

 私は貴富さんの腕を触り、小さく首を振った。

 これ以上はもう無駄だと言外に伝える。でも貴富さんは諦めきれないらしく、目が嫌だと言っている。

 説得できない相手を説得するのは不可能だ。私たちは結婚できない。

 そう判断した時、私の中で黒い考えが浮かんだ。

(私たちは結婚できない。おばあ様が死ぬまでは)

 言葉もしっかりしているし、目の力も強い。生命力はある。でも、そうはいっても自然の摂理には勝てないし、人はいずれ死ぬ。

 それが何年、何十年後になるかはわからない。でも、永遠に結婚できないわけではない。

 籍を入れられなくても、貴富さんが側にいてくれるなら構わない。

「貴富さん、私はもう……」

 言いかけた時、玄関のチャイムが鳴った。執事が慌てて玄関に走る。

「誰だろう、身内でしか家のチャイムは鳴らせないはずなのに」

 貴富さんは訝しげに呟いた。
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