ご令嬢ではありません!~身代わりお見合いだったのに、敏腕CEOが執愛に目覚めたようです~
「そんな恰好で大丈夫?」

「いつもだいたいこんなかんじなので問題ないです!」

「え?」

 しまった、一言余計だった。慌てて話題を変える。

「タクシー呼んでもらってもいいですか?」

 住所がわからないので社長に頼む。

「ああ、すぐに」

 社長がタクシー会社に電話している間に、帰る用意を始める。巾着袋に入れていた財布と携帯は個室に置いていたので無事だったようだ。酔っぱらって持って行くのを忘れただけだけれど、助かった。あと靴は……スリッパを借りて帰ろう。

「あと五分ほどで到着するらしい」

「良かった、外に出て待っています」

「一緒に行くよ」

 社長は上着をきて、私をエスコートするように部屋を出た。

 社長の家は高級マンションらしく、ホテルのようなロビーを通り抜けてエントランスに向かう。

 ロビーの通路で、社長はなにかを思い出し、急に立ち止まった。

「連絡先を教えてくれる?」

 社長が携帯を差し出す。
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