ご令嬢ではありません！～身代わりお見合いだったのに、敏腕CEOが執愛に目覚めたようです～

　実験の測定を開始する。データを収集するこの時間は、単調だけれども正確さが求められる。とはいえ慣れてくると考えごとをする時間が多くなる。

　いつもは分析や報告内容を考えることが多いのだけれど、今日はなかなか集中できなかった。

　いかんせん、やらかしてしまった出来事が多すぎる。

　こうやって何事もなく仕事をしていていいのだろうかと思うくらいだ。

（よりにもよって、社長だよ？ 社長と……）

　昨晩の出来事を思い出し、顔から火が出る。

（ななな、なんで私はあんなことをしてしまったの！ 絶対流されちゃいけない場面だよね⁉ だって私、有紗として社長に会っていたのに、なんてことを）

　有紗になんて伝えよう。どうしよう、顔向けできない。

（それに、初めては激痛で苦行の時間だっていう一般論は嘘だったの⁉ それとも私の身体がおかしいの？ それか相性が良すぎて……って、相性なんてわからないし！ 比べる相手すらいないのに！）