ご令嬢ではありません!~身代わりお見合いだったのに、敏腕CEOが執愛に目覚めたようです~
(気づかれませんように、気づかれませんように、気づかれませんように!)

 ロビーに背を向けて顔を隠しながら、社長が無事に通り過ぎてくれることを願う。

 背後で複数人が歩いていくのを感じる。

 社長の顔を見たい気持ちもあるけれど、そんな危険は冒せない。

 悲鳴のようにうるさく鳴る心臓を落ち着かせながら、じっと息をひそめる。

 音もしないし気配もしない。そっと後ろを振り返ると誰もいなかったので、こっそりと顔を出した。

 ロビーでは遠くなっていく社長の後ろ姿を確認できた。

 ほっと胸を撫でおろす。もう少し遠くなってから出ていこうと思っていた矢先だった。

 バッグから電話の着信音が鳴り出した。

(もう! こんな時に誰よ!)

 社長が音のする方に顔を向けたら大変だ。慌てて取り出し、着信相手の表示を見て固まった。

(え、社長?)

 一気に血の気が引いていく。なんでこのタイミングで?
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