ご令嬢ではありません!~身代わりお見合いだったのに、敏腕CEOが執愛に目覚めたようです~
 だんだんと焦り始めるけれど、社長は相好を崩し、ご機嫌な様子でおつまみの準備までしている。

「あ、あのっ! これお借りしていた洋服なのですが」

 紙袋に入った社長の服を差し出すと、

「ああ、そこらへんに置いておいて」

 と恬淡な様子で言われたので、ソファの上に置いておくも、着物が返却される様子はない。

 着物を返してもらわなければ帰ることもできないし、急かすのも悪い気がするし、私は一体どうしたらいいのだろう。

 社長はソファ前のテーブルに、おつまみとチェイサーと小さなグラスを置いた。

 そして、にこやかな笑顔で社長がお酒を持ってきた。

「この前お食事したとき、獺祭が好きと伺ったので取り寄せました」

 わざわざ取り寄せたなんて聞いたら、断るわけにもいかない。

「わ、わぁ、ありがとうございます~」

 ワインもけっこう飲んでいるのに、そのうえ日本酒まで飲んだら潰れてしまいそうだ。

 かといって、嬉しそうな社長の笑顔を見たら、グラスを持ってしまっている私がいる。
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