ご令嬢ではありません!~身代わりお見合いだったのに、敏腕CEOが執愛に目覚めたようです~
途端に熱が冷めていった。

 社長が抱いているのは、私ではなく有紗なんだと突きつけられたとき、悲しくて涙が出てきた。

「やめてっ!」

 それまで流されてばかりだったのに、初めてはっきりと拒絶を示した。

 社長の身体を両手で強く押してどかした。社長はとても驚いた顔で固まっている。

「着物、返してください!」

「ああ、それなら、クローゼットの中に」

 私は起き上がって、勝手にクローゼットを開けた。着物は大きな袋の中に入っていたので、それを取って寝室を出る。

 そのまま玄関に行こうとして、バッグをリビングに置いていたことを思い出して取りに行った。

 そして玄関に向かうと、社長が困惑した様子で立っていた。

「ごめん、なにか、気に障るようなことをしてしまった?」
< 64 / 247 >

この作品をシェア

pagetop