難攻不落の女
振り向くと笹目がいた。ぱっと顔を輝かせるのを見て、思わず席を立ち上がっていた。
「宇美さん、昼間にもらったブラウニー、美味しかったです」
「いや、そんなことよりなんでここにいるの。会社、神奈川の方じゃなかった?」
「家が東京なんですよ」
それがこの場所にいる理由になるのか? 呆気にとられていると、
「大学の友人と来たんです。三人の家の中間点がちょうどこのあたりなので、仕事帰りに飲もうって話になって」
笹目は逆側の壁際のボックス席を指した。スーツを着た男二人が、遠くから会釈してきた。
「ああ、それでか」
メンテナンスに来たときに、この辺りの店について訊かれたことを思い出し、合点がいった。
「しかしまあ、すごい偶然だわ」
他の部署の誰かも、この店を気に入っているということだ。
「宇美さん、何飲むんですか」
「マッカラン」
「じゃあ僕もあとでそれ頼んでみます。実はウイスキー、居酒屋以外で初めて飲むんです」
仕事から解放されているからなのか、すでに酔っているのか、弾けるような笑顔を見せて友人たちのところへ戻っていく。
グラスを持った新井が戻ってくると、宇美は顎で笹目のテーブルを指した。
「宇美さん、昼間にもらったブラウニー、美味しかったです」
「いや、そんなことよりなんでここにいるの。会社、神奈川の方じゃなかった?」
「家が東京なんですよ」
それがこの場所にいる理由になるのか? 呆気にとられていると、
「大学の友人と来たんです。三人の家の中間点がちょうどこのあたりなので、仕事帰りに飲もうって話になって」
笹目は逆側の壁際のボックス席を指した。スーツを着た男二人が、遠くから会釈してきた。
「ああ、それでか」
メンテナンスに来たときに、この辺りの店について訊かれたことを思い出し、合点がいった。
「しかしまあ、すごい偶然だわ」
他の部署の誰かも、この店を気に入っているということだ。
「宇美さん、何飲むんですか」
「マッカラン」
「じゃあ僕もあとでそれ頼んでみます。実はウイスキー、居酒屋以外で初めて飲むんです」
仕事から解放されているからなのか、すでに酔っているのか、弾けるような笑顔を見せて友人たちのところへ戻っていく。
グラスを持った新井が戻ってくると、宇美は顎で笹目のテーブルを指した。