難攻不落の女
「プライベートを話すにも、私は趣味と言えるようなものがないんだよな。強いて言えば、人間観察か」
「人間観察、ですか」

「どこに行っても、人を見ているのが楽しいかもしれない。桜の季節に名所に行っても、美術館に行ってもさ、結局見ているのは人なんだよな」
「じゃあ、どこに誘っても楽しんでくれるっていうことですよね」

「考え方がやけに前向きだな」
 ちらりと横顔を伺い、とりあえずはいつもの調子が戻り始めてきたことにほっとする。

「人が好きって言ってもさ、私は一人が好きなんだよね。暇だからなのかね、そこにいない人のことまで、いつも考えてしまうから、深いつき合いをすると疲れてしまうのかもしれない」

「でもそうやって、自分のように考えてくれる人がいたら、周りの人はみんな宇美さんを頼っちゃいますよね。皆さん、相手が宇美さんだと、なんでも話してしまうって言ってました」

 会議から戻るのを待つ間、そして他の部署に行ったとき、笹目は宇美に関して情報収集をしていたらしい。
 なぜそこまで。笹目の懸命さは、どこからきているのだろう。

「期待させても悪いから、今のうちに言っておくけど。好意を寄せられても、応えられないと思う。笹目くんのことをそういう目では見られないし、付き合うメリットがない。デメリットの方が大きい」

 嫌な言い訳だと思いつつ、宇美は言い切った。
 期待を持たせて振り回すことに意味はない。傷つけることに変わりはないのなら、傷は浅い方がいい。
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