難攻不落の女
「これさ、死ぬまで添い遂げることが前提になってるのはなぜ?」
「長く付き合った方が宇美さんにとってメリットが大きいからです。男のほうが寿命が短いけど、俺が年下なら宇美さんを一人にはさせないかなと」

「面白いこと言うね。仕事中にする話でもないけど」
 宇美はテーブルの上に書類を伏せて置いた。

「だって、あんなに訊いたのに、連絡先教えてくれなかったじゃないですか。だまし討ちはやめろって言うし」
「私は笹目くんが思ってるような人じゃないからね。映画のヒロインどころか脇役だ」

 相手の真剣さがわかるほど、ときめくどころか恐ろしくなる。歳の差が原因なのか、それとも恋の仕方さえ忘れてしまったからなのか。
 ソファにもたれかかったとき、後ろから囁きが聞こえてきた。振り向くと、観葉植物の間から女性社員たちが覗き見している。

「何してるの」
 呆れながら声がけすると、
「宇美さん」
 女性社員の一人が回り込んできた。
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