偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる

「ぜんぜん。借入金を出来るだけ少なくする為に自己資金をもっと増やしたいし、手続や法律の知識をもっと深めたいし、準備したいことは山積みだよ。三年後にオープン出来たらいいなと思ってる」

「手続や開業準備はコンサルタントに任せたら安心だし間違いないよ。知りあいに居るから花穂さえよければ紹介するけど」

「ありがとう。でも出来るだけ自分でやってみたいんだ。それで無理そうだったらお願いするかも」

「うん、いつでも言って」
「心強いよ」

 花穂は厳しく古風な価値観の両親の元に生まれ育った。一人っ子だからか過保護で成人してからも何かと干渉を受け抑えつけられる窮屈な日々を送っていた。

 それでも諍(いさか)いを起こすことが怖くて、親の言いなりになってしまう自分が嫌だった。

 だからか、自分の店は誰かに頼らず自分の力で持ちたい。もちろん出来ないことはいく
つもあるだろうが、初めから人任せにはしたくない。

「そう言えば今日、響一さんが来てたでしょ?」

 伊那が思い出したように話題を変えた。

「うん、八時過ぎに。用が有ったの?」

 伊那と響一の実家は仕事上の付き合いがあるらしく、元から顔見知りだったそうだ。
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