偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる

 花穂が二十一歳の年、親が決めた相手と婚約を結んだ。

 相手は花穂より三歳年上。地元で一番大きな企業の後継ぎで、名前は有馬(ありま)輝(ひかる)と言った。

 花穂の城崎家は現在は勢いを失っているものの、江戸時代よりも前から続く名家。

 地元では有名なふたつの家が繋がるということで、なにかと注目された縁組だった。

 両家の親も親戚もお祭りムードで、かなりの盛り上がりを見せていた。当人以外は。

 輝は見合いの場から、明らかに花穂に関心がなく、婚約が決まり顔を合わせる機会が増えてからも素っ気ない態度だった。

 噂では付き合っている女性がいるのだとか。真実かは分からないけれど、彼が華やかで大人っぽい女性と親しくしている場面を何度か見かけた。

 彼女のような女性が好みなのだとしたら、正反対のタイプの花穂との婚約に気が乗らなくても仕方ない。

 いつも素っ気なく冷たい輝に対して、花穂も愛情を持てずにいた。

 周囲の盛り上がりとはうらはらに、当人同士は冷めきっていたが、花穂は両親をはじめとした周囲の人々の期待に応えようと、輝に歩み寄る努力をした。
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