偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる

 しかし恋愛経験がない花穂の行動は輝にとって的外れで逆に苛立たせてしまったのか、距離はますます広がるばかり。

 そんなある日、婚約解消を決心する決定的な出来事があった。

 輝が花穂を脅し暴力を振るったのだ。酒の席でのことで、後日謝罪はあったものの、花
穂は輝に恐怖を感じ顔を見るのも苦痛になった。

『お父さん……私、有馬輝さんとは結婚出来ない。婚約はなかったことにしてください』

『輝君は深く反省して真摯に謝罪しただろう。花穂に対して二度と暴力は振るわないと。幸い花穂に怪我はなかった。つまり酔っていても力をセーブする理性は残っていたのだ。彼には更生の余地がある。一度くらいはやり直す機会をあげなさい』

 父は花穂を宥め、婚約を継続しようとした。

 確かに傍からも分るような負傷はしていない。父が言う通り輝は本気で殴らなかったの
だろう。

 けれど花穂の心は表から見えないだけで深く深く傷ついた。

 暴力が怖かったのは勿論だが、両親が味方になってくれなかったのが辛かったし失望した。

 花穂は初めて父親に逆らい、逃げるように実家を出て東京に出て来た。それが今から三年前、婚約をしてちょうど一年が経った頃の出来事だった――。

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