偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる

「入院中だから心配いらない。骨が弱くなるのは加齢だけではなく体質や生活習慣も関係していると言っていた。退院後は薬を飲んで治療を続ける必要はあるが、日常生活は送れるそうだ」

　淡々と答える父に、花穂は頷いた。

（よかった。骨折は大変だけど、治らない訳ではないみたい）

　ほっと胸をなでおろし、あとで父が言っていた症状の病気を調べようと決心する。

　しかし安心したせいか、父とふたりきりという状況が気になりはじめた。

　家を出る前から、父との関係はあまりよいものではなかった。

　花穂は威圧的な父の言動に萎縮して上手く話せないことが多かったし、父ははっきり言わない花穂に苛立つと言う悪循環でお互いずっと相手に対する不満が燻(くすぶ)っていたのだと思
う。

　それが花穂の婚約解消というきっかけで爆発して、話し合いで解決が出来ない程、こじれてしまったのだ。

　あれから時間が経ち、花穂は以前より精神的に強くなった。

　父はまだ怒っているだろうが、当時よりはクールダウンしたはずだ。それでも幼い頃から感じていた苦手意識は簡単にはなくならない。
　花穂は気まずい空気に、こっそり溜息を吐いた。