偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 花穂の言葉を聞くにつれ、父の眉間にシワが寄って行く。

「お前は家族を捨てると言うのか?」
「捨てるって……そんなことは言ってないでしょう?」

 極端な父の言い分に花穂の戸惑いが大きくなる。

「言っているだろう。母さんは命に別状はないとはいえ、不自由な体になり家族の助けが必要なのに、お前は東京での暮らしを選ぼうとしているんだから」

「そんな風に受け取らないで。私なりにお母さんのフォローはしていくつもりだよ」

 実際何が出来るかすぐには分からないけれど、親を見捨てたりなんてしない。

「離れて住んで何が出来るんだ。いいからこっちに戻るように。それからお前に縁談が来
ている」
「縁談?……私は結婚なんてしないって言ったでしょう!」

 思わずかっとなって花穂は声を荒げた。
 以前、婚約破棄をして散々揉めたと言うに、父は何の後悔もしていなかったのだろう
か。

「相手がぜひ城崎家の令嬢をと望んでくれている。あちらはよい待遇で迎えてくれるはずだ。お前は見合いを嫌っているようだが、うちは代々見合い結婚で上手いっている。特別なことじゃないだろう」

 花穂は落ち着こうと息を吐いた。
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