偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 城崎家は歴史ある旧家だ。花穂の祖父が家業である不動産事業の投資で失敗し財産の多くを失いはしたが、それでも地元の人からは一目置かれているため見合い話は事欠かない。

 しかし花穂自身が望まれている訳ではない。

(恋愛すら気が進まない私が、お見合い結婚した相手と上手くやっていくなんて無理に決まっているじゃない)

 話を聞いただけでも不安しかないと言うのに。

(もしまた昔の輝さんのような人が見合い相手だったら? そんなの絶対に嫌)

 元婚約者に邪険にされ、暴言を吐かれた辛い記憶が蘇る。

「……お父さん、私は二度とお見合いはしないから。諦めてください」

 もう言いなりになるのは止めたのだ。いくら父の言いつけでも受け入れられない。

 改めてはっきり拒絶すると、父の顔にさっと赤みが差した。

「我儘はいい加減にしなさい!」

 怒りを抑えているのが声に現れている

「結婚相手を自分で決めることのどこが我儘なの?」

 自分の生き方を決めるなんて、誰もが当然に持っている権利のはずなのに。

(どうしてお父さんは分かってくれないの?)
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