偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 父と母が親が薦める見合い結婚で上手く行ったからだとしても、花穂にそれを求めないで欲しい。

「私には無理だから。有馬輝さんと気が進まないお見合いをしてどうなったかお父さんだって知ってるでしょ? 同じ失敗は絶対にしたくないの!」

 あのとき少しも辛い気持ちに寄り添ってくれなかった父への怒りがこみあげて来て、自分でも驚くくらい強い口調で拒否をしていた。

 こんな風に怒りをぶつけることは、三年前には出来なかった父も花穂の発言に動揺している様子だった。

「……あのとき、お前の訴えをしっかり受け止めなかったのは間違いだった。悪かった」

 しばらくの無言が続いた後、父が突然深く頭を下げた。

「……え?」

 父のそんな姿を見るのは初めてで、花穂は目を見開く。

「家を出て行ったお前をずっと放っておいたのに今更頼るのはむしがいいとも思う。それでもこの通り頼む。縁談を受けてくれ」

 そう言うと父は更に深く頭を下げた。土下座といっていい体勢で花穂は慌てて声を上げる。

「お父さん? そんな真似やめて! どうしてそこまで……」

 持ち込まれた縁談を断れないからということはないはずだ。
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