偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
(でもまた以前のように相手が私を嫌って暴言を吐かれるかもしれない)

 そんな男性ばかりではないと分かっていが、どうしても不安が拭えない。

 それに、地元に戻り結婚したら、カフェの夢は叶わない。せっかく初めて出来た目標だったのに。

「あまり時間がない。来月の初めには見合いの席を設けたい」

 やけに急いでいるのは、借金の返済期限が関係しているのだろうか。

「少し考えさせて」

 そう答えるので精一杯だった。

 突然困難な状況に陥り、花穂は激しく動揺していた。

 本音は望まない結婚なんてしたくない。だからと言って、困っている家族を放っておけない。

 気持ちが揺れる中、父と共に母の見舞いに行った。

「花穂、来てくれたのね」

 記憶よりも大分痩せた母が、花穂の顔を見た途端に涙ぐんだ。

「お母さん、大変だったね。知らせを聞いて驚いた。痛かったでしょう?」

 すっかり弱って娘に縋るような目を向ける母に、どう接していいか分からなくなる。

「今は大丈夫よ。花穂が来てくれたからね。しばらくはこっちに居られるのよね?」

「ごめんね、仕事があるから長くはいられないの」

「そう……」
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