偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
「いらっしゃいませ」
見覚えのない女性スタッフがやって来て響一に声をかけた。
「おひとりさまですか?」
「はい」
花穂はどうしたのだろうか。
「お席にご案内いたします」
スタッフは響一を窓際の席に案内しようとする。
「すみません、奥の席でもいいですか?」
「あ、はい」
一瞬戸惑いの表情を浮かべたスタッフは、すぐに笑顔をつくり響一を最奥の眺めがよい
とは言えない席に向かう。
そう言えば花穂は何も言わなくても響一を望む席に促してくれる。
「すみません、今日、城崎さんは出勤されていますか?」
さり気なく聞いたつもりだが、スタッフは困ったように視線を彷徨わせた。
「あ、彼女とは個人的に付き合いがあって、本を貸す約束をしていたんですが」
怪しく思われ警戒されているのかと、爽やかだと評される笑顔を見せる。すると目論見
通り相手の警戒が解けた。
「そうなんですね。城崎さんはここ数日お休みしていまして……次の出勤予定を確認して
来ますので少しお待ちください」