偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 それまでに仕事を片付けようと、響一は席を立った。

 アリビオを出ると大きなため息が漏れた。

 花穂が心配なのはもちろんだが、彼女がどこかの男と見合い結婚をしようとしていると
思うと、不快感が増す。

 彼女が何等かの問題に悩んでいるかもしれないときに、嫉妬している場合ではないが、
なかなか収まりそうにない。

 響一はそれくらい彼女に心惹かれている。


 午後十時三十五分。

 響一は再びアリビオの扉を開いた。

 先ほどとは違い静まり返った店内に、ドアベルの音がやけに大きく響く。

「遅くまで待たせて悪かったわね」

 しばらくするとキッチンから伊那が出て来た。

「いや、仕事が溜まっていたから丁度よかった」

「そう……あ、その辺に座っていて」

 伊那はそう言い再びキッチンに下がってしまった。

 響一は入口近くのテーブルの椅子を引き腰を下ろす。すぐにグラスをふたつ持った伊那
が戻って来た。

「どうぞ」
「ありがとう」

 店内が少し暑いため、アイスコーヒーは有難い。

 伊那がテーブルの向こうの椅子に座ったところで、響一は早速切り出した。
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