偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
「さっきの続きだけど、城崎さんはなぜ急な見合いをするんだ？」

　伊那が憂鬱そうに顔を曇らせた。

「家庭の事情でね、結婚を条件に婚家から支援を受けるみたい」

「彼女は嫌がってるのか？」

「夢を持って目標に向けて頑張っていたのに結婚で駄目になってしまうんだもの」

　当たり前でしょうと、伊那は溜息を吐く。

「そうだよな。彼女は自分の店を持ちたいと頑張っていたから」

「花穂から聞いたの？」

「ああ、世間話のついででだが」

「ふーん……やっぱりね」

　伊那が含みのある視線を向けて来た。

「やっぱり？」

「花穂はかなりプライベートな話まで響一さんにしていたみたいだなって。まあ予想はしていたけど」

「何度か顔を合わせるうちに意気投合したんだ。特別なことでもないだろう？」

「花穂に限っては違うわ。あの子は愛想が無い訳じゃないけど、男性と必要以上に話したがらないから」

　響一は相槌を打った。そう言えば知り合ったばかりの頃は、かなり警戒されていたなと思い出したのだ。

　こちらに気を遣ってくれていたからだろうが、とにかく関わらないようにしているよう
に見えた。

響一から声をかけるようになっても、いつも壁のようなものがあって、親しくなるまでに時間が必要だった。
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