偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
自分の店を持ったとしても花穂ひとりで返済していくのは無理でしょうね。そう分かって
いるのに借金するとは思えないわ」

 悔しいが伊那の言葉はすとんと腑(ふ)に落ちた。

 他愛ない会話からも花穂の誠実さや真面目さが感じられた。彼女は窮地を脱するためだ
としても、出来ない約束などしなそうだ。

「私は利用できるものは何でも利用すればいいと思うんだけどね。花穂は今思い詰めてる
し、普段よりも更に融通が利かなくなってるの」

「気持は理解出来るが、誰かの手を借りるべきだと思う。彼女が納得してくれるのなら俺
が……」

助けたいと言おうとしたとき、伊那がずいっとテーブルに身を乗り出して来た。

「俺が?」

期待するようなその視線で、伊那は響一の気持に気付いているのだと悟る。きっとだからこそ花穂の事情を話してくれたのだろう。

「俺が助けたい。だがどうやったら受け入れて貰えるのか」

 客観的に見て響一と花穂の関係は、仲のよい知人程度だ。そんな相手が経済援助しますなんて言っても警戒するだけではないだろうか。

「響一さんがそのつもりなら私も協力する。もともとそのつもりだったのよ」

「なにか考えがあるのか?」
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