偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
「とりあえず直近に迫った縁談を、なんとかして潰してしまうの。花穂だって時間に猶予があれば他の方法を考える余裕も出来るだろうし」

「なるほど……まずは差し迫った問題を排除するんだな」

 響一と伊那の伝手を遣えば可能なはずだ。

 その後、負債をどうするか検討すればいい。

「よかった」

 伊那が満足そうに微笑む。初めからこうなるのが分っていたという顔だ。

 彼女の手の上で転がされたようで不満だが仕方がない。

 花穂が他の男と意に染まない結婚をするのを黙って見過ごすなんて、響一には出来ないのだから。

「すぐに動く。事情を話してくれてありがとう」

 響一が席を立つと、伊那も続いて立ち上がった。

「頑張ってね。花穂の為にも」

『頑張ってね』に含みを感じたが、気付かないふりをしてアリビオを出る。

 夜の町の喧噪の中を歩きながら、これからの段取りを目まぐるしく考えた。
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