偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
「心配しなくてもしっかり考えてますよ」

「考えていたらなぜ未だに婚約者すらいないんだ。それどころか付き合ってる相手もいな
いそうではないか」

「まだ結婚を申し込みたくなるような女性に出会っていないだけです。気長に探しますよ」

 響一の言葉が軽く感じたのか、祖父がはあと溜息を吐いた。

「お前はもう三十三なんだぞ? 分かってるのか?」

「まだ十分若いし、正確には三十一です」

「お前の父もそう言って三十をいくつも越えてから結婚した。幸いすぐにお前が生まれた
が、妻に愛想をつかされ別居になり最後は離婚!」

「あまり相性がよくなかったようですね」

 以前母から聞いた話では、妊娠中と産後の父の態度が最悪だったらしい。その後挽回す
るような出来事はなく気持ちがどんどん冷めていったのだとか。

「お前の叔母も同じようなものだ。突然結婚相手を連れて来たと思ったら妊娠していると
言う。チャラチャラした職にも就いていない不安しかない相手だった。当然反対したが親
の意見など聞かず式も挙げずに強引に結婚。そして二年も経たない内にあっさり離婚!」

「でも叔母さんは楽しそうに過ごしてますよ」
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