偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 響一の叔母は離婚後再婚せずに起業して美容業界で活躍している。
 彼女のひとり息子で、響一の従兄にあたる広斗(ひろと)は六条ホールディングスで働く同僚だ。

 響一のひとつ年上と年齢が近いこともあり、幼い頃からの親友でもある。

「私の兄弟も皆離婚した」

 響一は深く頷いた。

「知ってます。当家は完全な離婚家系です」

 夫婦仲が悪くなるのは、よくある話なのかもしれないが、問題は離婚を実行してしまう行動力だ。

 結婚にしても離婚にしても、自分がこうだと決めたら周囲の反対や、世間体など気にしないで突き進む。上手くいけばいいのだが、無事添い遂げたのは祖父くらいだろう。

 皆それなりに充実した暮らしをしているら、結果として良かったのかもしれないが。

「おかげで私には甥も姪もいない。孫はお前と広斗のふたりきり。このままでは六条家はなくなる。お家断絶だ」

 そんな大げさな、と思うが年老いた祖父にとっては重大問題なのだろう。

「だから六条本家を継ぐのは既婚者で安定した家庭を築いている者と決めたんだ。それなのにお前も広斗も結婚しようとする気配が全くない。どうなってるんだ!」
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