偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 どういうこと?と父に目で訴える。父は花穂の戸惑いを分かっているはずなのに完全無視だ。

「花穂、何ぼんやりしているんだ。六条さんに挨拶をしなさい」

「……城崎花穂です。本日はよろしくお願いいたします」

 胸中に渦巻く感情を抑え、頭を下げる。

(私と彼が知り合いだって、お父さんは知ってるのかな?)

「こちらこそ。私の家族が同席出来ず申し訳ありません」

 響一の態度から、初対面のふりをするのだと察した。

(事情が全く分からないけど、合わせた方がいいんだよね?)

「お忙しいのは理解しておりますのでお気になさらず。しかしいずれご挨拶の機会を頂き
たいですな」

「勿論です。父は海外在住の為帰国のタイミングでご挨拶に来るよう伝えます」

「おや、響一さんはご両親と別居でしたか?」

「私は祖父と本家で暮しています」

 見合いの席だから当然かもしれないが、響一のプライベートな情報が次々と入って来る
状況に戸惑ってしまう。

 そんな父は上機嫌な笑顔で言葉を続ける。

「響一さんの祖父君と言えば、六条グループの前会長ですな」

「ええ。今は引退していますが」

「しかし影響力はまだまだ絶大だと聞いていますよ」
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