偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる

（響一さんってこんな風に笑う人だったんだ）

　彼の主なイメージは落ち着いたビジネスマン、何事にも動じない出来る大人の男性だったと言うのに。今はとても感情豊かだ。

（さっきも思ったけどやっぱり素を出してるよね？　それとも気を遣ってくれている？）

　彼は優しいから花穂が気まずくならないようにフレンドリーに振舞ってくれているのかもしれない。そう納得しようとするものの、響一の表情や声が花穂との時間をとても大切にしているように思えて、勘違いしそうになる。

（そんなことあるはずがないのにね……勝手に思い込んで悩むのは止めよう）

　いちいち戸惑ってしまうのは響一との関係が、予想していたものと違うからだ。

「どうした？」

　ずっと黙っていたからか響一が心配そうに花穂の顔を覗き込んで来た。

「い、いえ。なんでもないですよ」

「それならいいけど。困ったことがあるなら相談して欲しい。必ず力になるから」

　そう言う響一の表情は真剣だ。

「……ありがとうございます。今のところは本当に大丈夫です。お祖父様への挨拶のことを考えていたら少し緊張してしまったんです」

「ああ、それなら大丈夫」