偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
「花穂さんのような素晴らしい女性が、響一に嫁いでくれるとは有り難い!」
六条家の屋敷に豪快な笑い声が響く。
「い、いえ……至らない点が多々あると思いますが、少しでも早く六条家に慣れるよう……」
「いやいや、そんなに構えなくていい。好きに過ごしてくれたらいいんだ。響一が世話をかけると思うが、見捨てずにいてやって欲しい」
「ありがとうございます。私こそ響一さんにがっかりされないように努力します」
花穂は恐縮しながら頭を下げた。
響一に連れられて、彼の祖父への挨拶の為に六条家を訪れたところ、祖父自ら玄関までやって来る大歓迎をされた。
通された応接間の座卓にはずらりとご馳走が並んでいた。
響一から祖父が楽しみにしていると聞いてはいたものの、想像以上の事態に驚きながら席に着き挨拶をして今に至る。
上機嫌の祖父、あたふたする花穂、そして花穂の隣の響一は涼しい顔だ。
上品に箸を運び食事をしていた響一は、花穂の視線に気づいたのかこちらを向き微笑んだ。
「何かとろうか?」
「だ、大丈夫です」
花穂は慌ててそう言い、同時に失敗したと凹んだ。
(私こそ響一さんに聞くべきことだった……きっと気が利かないと思われたよね)
気まずい思いで祖父の方をちらりと見る。しかし心配とはうらはらに祖父は相変わらず満足そうに花穂を見ているのだった。
(そんなに響一さんの結婚を望んでいたのかしら)