偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
「気にせず好きにしていいからな」
「……ありがとうございます」
響一の気遣いが籠った言葉が嬉しかった。カフェの開業など六条家の力をすれば容易い。
けれど花穂がそれを望んでいないと響一は分かってくれているのだ。
自然と笑顔になると、響一が慌てたように目を逸らした。
「響一さん?」
一体どうしたのだろうか。
「……いや、なんでもないよ」
「そうですか?」
「ああ」
「花穂さん、気にしないでやってくれ、年甲斐もなく照れているだけだ」
祖父が呆れたように呟く。声が小さくよく聞こえなかったうえに、よく分からない微妙な空気が漂っているが、花穂はなんとなく楽しい気持ちでくすりと笑った。
その後、力を抜いた会話が続きすっかり打ち解けたのだった。
響一との結婚を決意し東京へ戻って来て半月が経った。
花穂は日中は新居の改装の手続や、カフェ開業のための勉強に費やし、週五日十六時から二十二時までアリビオで働いている。
「今日の賄いはタンドリーチキンよ」
クローズ作業がだいたい終わったところで、伊那がワンプレートに綺麗に盛った賄いを運んで来た。