偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
(あれ、広斗さんには何か問題があるのかな?)

 気になったものの、プライベートな話のため踏み込みづらい。

「そろそろ話題も変わっているだろうし戻ろうか」

「あ、はい」

「そこ段差になってるから気をつけて」

 響一がさり気なく花穂の手を取り、玄関に促す。

 初めは手を繋ぐだけで狼狽えいたが、今は大分慣れて自然に受け入れるようになった。

 大きな彼の手に包まれていると、守られているような気がして安心する。

 手を繋ぐのが自然になると、肩を抱き寄せられたり、背中に手を添えられたりと、ささやかなスキンシップが増えてきた。

 響一はとても自然にそういった行動をする。彼も花穂に慣れてきているからだろうか。

(新居が整って一緒に生活するようになったら、もっと近い関係になるのかな)

 玄関に向かう途中、花穂はちらりと玄関近くの個室に目を遣った。

 廊下を挟む形の主寝室と洋室が二部屋。花穂たちはそれぞれの私室として使う予定でいるのだけれど……。

(響一さんは子供のこととかどう考えているのかな)

 ふとそんな考えが脳裏を過る。
< 92 / 214 >

この作品をシェア

pagetop