偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 祖父が結婚を急かすのは、六条家の親族がどんどん減っている現状に焦りを覚えているからだ。ならば当然響一の子供について強い関心を持っているはず。

 しかし花穂と響一は普通の夫婦ではなく、もちろん体の関係は一切ない。

(響一さんは離婚を考えている様子は全くないから、後継ぎを産むのは私になる? でもそうなると彼とそういう行為をするってわけで……)

 ついあれこれ想像しそうになり、花穂は動揺した。

「花穂、どうした?」

 様子がおかしいと感じたのか、響一が怪訝そうに花穂の顔を覗き込む。

「えっ、べつに、なんでもないよ?」

 慌てたからか片言になってしまった。いつもの花穂らしくない反応だったからか響一が目を丸くして噴き出す。

「どうしたんだよ?」

「いえ、本当になんでもなくて……」

(ああ、恥ずかしい)

 確実に変な人だと思われた。かと言って子作りについて考えていたことは絶対に秘密だから誤魔化すしかない。

「今日の花穂は変だな。でもすごく可愛い」

 響一の悪戯心を刺激してしまったのか、やけに色っぽく耳元で囁かれた。

「う……響一さんって結構意地悪ですね」
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