偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 大人の男の色香にやられてしまい、花穂は真っ赤になって俯いた。

「あー好きな女に対してはそうかも」

「もうっ!」

 これ以上揶揄って羞恥心を煽らないで欲しい。

 くすくす笑う響一に厳しい目を向けて抗議する。おそらく効き目はないけれど。

「ごめん、俺が悪かった」

 そんな風に口では言いながらも、響一の目は楽しそうだ。

「花穂、機嫌直して」

 建物から出ても響一は花穂の手を離さない。優しい目で嬉しそうに花穂を見下ろしていた。

 客間に戻ると響一が言う通り、話題が変わったようで他の親族を交えての歓談中だった。

「花穂さん、離れはどうだったかな?」

 祖父は花穂に気付くと、上機嫌で声をかけて来た。

「順調にリフォームが進んでいました。お庭を少し歩いたのですが綺麗に整えられていて、部屋からの眺めも素敵になりそうです」

「そうか。完成したらすぐに引っ越してきなさい」

 にこにことして言う祖父に、響一が身を乗り出した。

「あまり花穂にプレッシャーをかけないでくださいよ。仕事の都合だってあるわけだし焦って引っ越す必要はない」

「お前はまた呑気なことを言いおって!」
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