偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 再び怒りだした祖父に広斗が呆れたような溜息を吐く。それから花穂に気遣うような視線を向けた。

「花穂さん、騒がしい家族で申し訳ない。祖父の話は気にしなくていいですからね」

「はい。お気遣いありがとうございます」

 広斗は申し訳なさそうな顔をしていたけれど、花穂はこの賑やかな空間が割と好きだと感じていた。

 和気藹々としていて、自分もその輪に入っていると思うと温かな気持ちになった。



 年末年始の休暇が終わり、日常が戻って来た。

 花穂は相変らず週に五日アリビオで働く傍ら、ときどき実家に両親の様子を見に行く生活を送っている。

 一月中旬の週末。花穂はマンスリーマンションを出て、改装が完了した六条家の離れに移った。

 平屋建ての3LDKの新居は、タタミスペースがある広いリビングと、主寝室に個室が二部屋とふたりで暮すには贅沢なつくりだ。

 家具は響一と相談して、シンプルでモダンなものを新しく購入した。

 響一の私物は先だって本宅から運びこんであり、すぐにでも生活を始められる準備が整っている。
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