桜ふたたび 後編
「こんばんわ、澪さん」
会いたくない人に会ってしまった。
素っ気なく会釈をして顔を戻す澪に、辻は「つれないなぁ」と頭を掻いて笑った。
「誰?」
千世がテーブル越しに顔を寄せてくる。キラキラした瞳に、厭な予感がした。
「ちょっと、知り合い」
「ちょっと、はないでしょう?」
辻は拗ねたように言うと、千世に爽やかな笑顔を向けた。
「辻です。ただいま澪さんに猛烈アタック中の、ストーカー野郎」
ぷぷっと、千世は吹き出した。関西人は自虐ネタに弱い。
「おもろいひとやわぁ。澪の親友の千世です。よろしく」
人の気も知らず、千世は斜め45度に顔を傾け、辻を見つめている。
「座ってもいいかな?」
「どうぞ、どうぞ!」
満面の笑みで椅子を指し示す千世に、澪は眉を寄せ首を振った。
彼とは関わりたくなりたくないのに、千世は臨戦態勢に入っている。