桜ふたたび 後編
❀ ❀ ❀
澪は、果てのない平原を彷徨っていた。
風が鳴っている。
腰丈ほどの細い青草が、右から左へ波打ち流れている。
ときおり踏ん張り切れず抜けた草が、勢いよく巻き上げられて、黄色い空へくるくる吸い込まれていった。
空には、血のように紅い双子の太陽が、沈みかけている。
〈結婚して、子どもをつくって、私と澪が得られなかった温かい家庭を築こう〉
ジェイの声がした。
澪は辺りを見回した。彼の姿はどこにもなかった。
風が唸りを上げて、澪の足下から吹き上がった。澪は思わず目を瞑り、両手で腹を庇った。
風が止んだ。
目を開けると、少年がいた。澪に背を向けて、ひとり佇んでいる。
「……あなた、誰?」
少年が振り返る。腕の中に、赤ん坊を抱いていた。
「待って! わたしの赤ちゃんを、どこへ連れて行くの?」
少年は、哀しそうに答えた。
「言ったでしょう? 望むから失うんだって。──ほら」
少年の視線の先にジェイがいた。顔のない女と並んで立っている。
ジェイは澪を見ることなく、背を向けた。
「ジェイ……」
呼び止めることもできず、ただ声が虚しくこぼれた。そのとき──
突然、顔のない女が澪に迫り、黒い唇を耳元に寄せた。
「言ったでしょう? 神様は、赦さない」
澪は、果てのない平原を彷徨っていた。
風が鳴っている。
腰丈ほどの細い青草が、右から左へ波打ち流れている。
ときおり踏ん張り切れず抜けた草が、勢いよく巻き上げられて、黄色い空へくるくる吸い込まれていった。
空には、血のように紅い双子の太陽が、沈みかけている。
〈結婚して、子どもをつくって、私と澪が得られなかった温かい家庭を築こう〉
ジェイの声がした。
澪は辺りを見回した。彼の姿はどこにもなかった。
風が唸りを上げて、澪の足下から吹き上がった。澪は思わず目を瞑り、両手で腹を庇った。
風が止んだ。
目を開けると、少年がいた。澪に背を向けて、ひとり佇んでいる。
「……あなた、誰?」
少年が振り返る。腕の中に、赤ん坊を抱いていた。
「待って! わたしの赤ちゃんを、どこへ連れて行くの?」
少年は、哀しそうに答えた。
「言ったでしょう? 望むから失うんだって。──ほら」
少年の視線の先にジェイがいた。顔のない女と並んで立っている。
ジェイは澪を見ることなく、背を向けた。
「ジェイ……」
呼び止めることもできず、ただ声が虚しくこぼれた。そのとき──
突然、顔のない女が澪に迫り、黒い唇を耳元に寄せた。
「言ったでしょう? 神様は、赦さない」