桜ふたたび 後編

「そんなに、バハルへ行きたかったの?」

澪は哀しげに見つめる。

「仕事が片付いたら、連れて行ってあげるよ。Abu DhabiでもIstanbulでも」

澪は顔を左右にする。

「ああ、海がいい? Bahamasか、Cancun?」

「……」

「澪」

澪は目を伏せ、かすかに唇を動かした。

「……離れていると、不安で……」

ジェイは虚を突かれたように、彼女を見下ろした。

「あなたが、他のひとを抱いたりしたらって考えると、苦しくて……」

「そんなこと、あるわけがない」

笑みを浮かべて否定する。だが、澪に瞳を覗かれまいとしたことが、まずかった。

案の定、澪の瞳に涙がさし浮かんだ。
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