桜ふたたび 後編
【罠? 誰がわしに罠を仕掛けるというんだ】

アランは顎を引いた形で、視線だけを会長に向けた。

【無論、発案者です】

【唐沢か? 唐沢がわしを陥れて、何の得がある】

(ありすぎるだろう)と、アランは心の中で答えた。

【わしのお陰で、ロシアとの北方貿易を優位に展開できているんだぞ】

──表では海産貿易、裏では密漁と密輸。彼らに不利益ばかり与えているがね。

【極東油田の開発にも、わしが口利きしてやった】

──それは、すでに国家間協議が進められていて、日本企業が基盤整備プロジェクトに多額の資金援助をしていたのに、あんたが強引に中国向けのパイプラインに変えようとして失敗しただけだろう。

【その謝辞として、〝モーリス〞という蜂蜜の在処を教えてくれたのだ】

ミロシュビッチはむっくりと上体を起こし、打って変わって激しい口調で言った。

【わしをいつまでこんなところに閉じこめておくつもりだ!】

──確かに、こんなところは人の住むところではない。
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