桜ふたたび 後編
❀ ❀ ❀
翌日の夜、アルフレックス邸に小包が届いた。
ジェイがニューヨークへ戻ったのを見計らった、奇妙なタイミングだった。
小包を届けたのはタクシードライバー。
プリンチペ駅のタクシー乗り場で、赤髪の女からアルフレックス邸へ届けるように依頼されたと言う。
列車に乗り遅れるからと、往復の乗車料金に高額のチップを上乗せしてもらい、運転手とすれば美味しい仕事だった。
ウィルからの報せに、翌早朝、ジェノヴァへ帰館したジェイは、小包の中身を手に取る前に、思わず肩を落として額づいた。
送られてきたのは、ヴェールとグローブ。
どちらも、赤黒い血に染まっていた。
ウィルは、血染めのヴェールを見つめながら口を開いた。
『提出したミオのサンプルと、DNA型が一致した。ミオは負傷している。犯人は、それを君に知らしめるために、わざわざこれを送りつけてきた』
ジェイは、ソファで項垂れたまま動かない。
ウィルは続けた。
『君を追いつめることが目的だった。しかし──逆に、墓穴を掘った』
顔を上げたジェイに、ウィルはにやりと笑う。
それから、折りたたまれた新聞紙をテーブルに置いた。
──梱包の詰め物に、何の意味があるんだ?
ジェイは怪訝に手にとって開いた。
そして、何かに気づいたように、何度か角度を変えて目を凝らした。
『……M、E、L』
『メルヴィン・マイヤー』
『メル?』
ウィルが大きく頷いた。
カールが口にしたあの〝子ども〞の名だ。
翌日の夜、アルフレックス邸に小包が届いた。
ジェイがニューヨークへ戻ったのを見計らった、奇妙なタイミングだった。
小包を届けたのはタクシードライバー。
プリンチペ駅のタクシー乗り場で、赤髪の女からアルフレックス邸へ届けるように依頼されたと言う。
列車に乗り遅れるからと、往復の乗車料金に高額のチップを上乗せしてもらい、運転手とすれば美味しい仕事だった。
ウィルからの報せに、翌早朝、ジェノヴァへ帰館したジェイは、小包の中身を手に取る前に、思わず肩を落として額づいた。
送られてきたのは、ヴェールとグローブ。
どちらも、赤黒い血に染まっていた。
ウィルは、血染めのヴェールを見つめながら口を開いた。
『提出したミオのサンプルと、DNA型が一致した。ミオは負傷している。犯人は、それを君に知らしめるために、わざわざこれを送りつけてきた』
ジェイは、ソファで項垂れたまま動かない。
ウィルは続けた。
『君を追いつめることが目的だった。しかし──逆に、墓穴を掘った』
顔を上げたジェイに、ウィルはにやりと笑う。
それから、折りたたまれた新聞紙をテーブルに置いた。
──梱包の詰め物に、何の意味があるんだ?
ジェイは怪訝に手にとって開いた。
そして、何かに気づいたように、何度か角度を変えて目を凝らした。
『……M、E、L』
『メルヴィン・マイヤー』
『メル?』
ウィルが大きく頷いた。
カールが口にしたあの〝子ども〞の名だ。