桜ふたたび 後編
いつの間にナースステーションに侵入したのか。目の前の男に気を取られていたとはいえ、足音も気配もしなかった。
固まったアイラに、黒髪の男が、氷のような目で言った。
『日本人の女が入院しているだろう?』
アイラは涙目になりながら、うんうんうんと、首を強く縦に振った。
『その部屋に案内してもらおうか』
アイラが何かを訴えているのを感じたのか、背後の男の手がすっと口から離れた。
アイラはすかさず叫んだ。
『います、いました!』
『いました?』
うんうんと、アイラは再び首を振った。
『逃げちゃったんです! それで今、みんなで探していて──』
説明の途中で、黒髪の男の視線がアイラの背後へ移った。
恐る恐る振り返ると、シャタンの髪の男がスマホを耳にしていた。
『どうだ?』
『ミオを追ったようです』
黒髪の男は、ギリっと音がするほど歯を食いしばり、身を翻すとあっという間に階段へと消えて行った。