桜ふたたび 後編

「マダムのティータイムにご招待されてるの?」

「……ティータイム?」

優子は呆れながら、

「あのね、金曜日は特別レッスンなの。出席できるのは、マダムにご指名を受けた限られた方だけ。羨ましいわ、澪さん」

感心しているのは、優子だけみたい。
奥歯を噛みしめ苦々しい表情の茉莉花を忖度するように、董子と萌愛は互いに目配せし合っている。

「澪さん、お仕事は?」

「いえ、最近こちらに越して来たばかりで……」

「お住まいはどちら?」

「今は泉岳寺に」

董子は、「次はあなたの番よ」と、萌愛に視線を送った。

「どちらのご出身ですかぁ?」

「京都です」

「まあ! 京都なら由緒正しいお家柄が多いですものね。ご実家は、元華族様とか? それともお家元?」

董子が突っ込む。

「いえ……」

「老舗のご商家かしら?」

「……いいえ」

面目なさそうに小さくなる澪に、董子と萌愛は再び目を合わせた。

「ご婚約者は外国の方でしょう? 先日、マダムのパーティーにご一緒されてたとか」

優子が、さりげなく話題を逸らしてくれた。

「マダムとお親しいご様子だったとお聞きしたけど、オーストリアの方?」

「いえ、今はニューヨークに……」

「ああ、それでぇ」

萌愛が声を弾ませた。

「エンゲージリングは○リーウィンストンのペアシェイプ・クラシックなんですってぇ。今日はしてらっしゃらないのぉ? あ、でもぉ、その○ルガリのメテオーラも素敵ですぅ」

短時間でそんなところまでチェックして、澪も知らない商品名まで言い当てるなんて、なんておそろしい人たちだろう。
早く逃げたいけど、この空気に逆らう勇気もない。
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